高級レストランの内装デザイン!7つのコツ
高級レストランとしての“高級感”を演出するのに欠かせない要素の一つが内装です。イメージしている内装を、どのようにデザインすべきか頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。
安さを売りにするレストランと差別化し、それなりのお客様を迎え入れるためには「高級感を出さなければ」と考えるのは自然なことです。けれども、高級レストランの内装に対する考え方が間違っていると、デザイン的に失敗する可能性が高まります。
高級レストランの内装デザインを成功させるためには、土台となる考え方を理解し、そこからデザインを出発させることが大切です。
本記事では、長年店舗デザインに携わってきた経験をもとに、高級レストランの内装をデザインするコツを7つご紹介します。
目次
高級レストランの内装は“高い質”にこだわる
高級レストランの内装デザインの依頼を受けた時、クライアントに必ずといってよいほど高級レストランにする理由を伺います。
そうすると、さまざまな答えが返ってきますが、
- 外見の高級さにこだわる(例:高い料金を設定したいから)
- 中身の質の高さにこだわる(例:質の高い料理を提供したいから)
というふうに、大きく2種類に分けることができます。
詳しく解説します。
ハードとソフトのバランスが重要
失敗しやすいのが外見の高級さばかりにこだわるケースです。
高級レストランなので、見た目の良さはもちろん大切です。“高級”という言葉を使うことによって、お客様に気づいてもらいやすくなるでしょう。けれども、一歩間違えるとハリボテのお店を作るリスクがある点に注意が必要です。
「雰囲気は高級感があってとてもいいんだけど内容が……」というお店の評判を聞いたことはないでしょうか。高級レストランを目指すなら、外見だけでなく内容の質にもこだわる必要があるということです。
レストランは、「ハード面」と「ソフト面」という2つの異なる要素で構成されています。
- レストランのハード面:外観や内装、家具食器、空調設備、調理設備など
- レストランのソフト面:接客、衛生管理、シェフの腕前、メニューなど
見た目の高級感だけにこだわるということは、ハード面だけにフォーカスして、ソフト面がおざなりになることを意味します。
ちまたには高級レストランがあふれ、美味しい料理を食べるのに事欠かないこの時代、お客様は「心地よい体験」をするためにサービスを利用する傾向にあります。
こうしたニーズの中、「行きたい高級レストラン」として選んでもらうには、ハード面とソフト面の両方を満たす必要があります。さらにそれだけでなく、両方に一貫性を持たせることが重要です。
その一貫性を表現するのが、内装の役目です。
高額なのにコスパがいい?
例えば、
- 大理石やタイル、天然の木材など高価な素材をぜいたくに使ったラグジュアリーな雰囲気のレストラン
- 余計なものを置かず、シンプルさに徹底的にこだわり洗練された雰囲気のレストラン
という、異なる内装のレストランがあるとします。
一見対照的なお店ですが、どちらも高級レストランとして認識されるのは、お店の一貫性を具現化しているからです。
内装に一貫性があると、お客様はたとえそのお店が「高級レストラン」と積極的に発信していなくても、そのサービス内容や提供される料理から「高級レストラン」と認識してくれます。
さらに、高額な価格帯のお金を支払ったにもかかわらず、「コスパの良いレストラン」と感じるのです。
一貫性を生み出す為にはコアとなるコンセプトも重要です。コンセプト作りについては「店舗のコンセプトを決める正しい方法と知識」を参考にしてください。
価格以上の体験価値を内装に落とし込む
ハリボテのお店を避けるにはどうすればいいのか?
それは、価格以上の体験価値をお客様に提供するという考え方が必要です。この考え方があるかないかでサービスの質が異なります。
高級レストランが高級な理由は?
高級レストランの価格は、普通のレストランより高めというのは当たり前の話ですよね。
多くのレストランでは、提供する商品やサービスの原価の仕入れや、人件費に費用がかかっているため、料金設定を高くしているはずです。
それ自体は決して悪いことではありません。しかし、原価や人件費を基準にしてしまうと、提供するサービスに限界がきて、お客様に
- 「それなりのお店だな」
- 「高い割にはいまいち」
といった印象を持たれる可能性が高くなります。
反対に、多少高くてもこの価値を提供するためには必要な投資と考えている人は、必然的に高めの価格を設定することになります。その結果、さらに高級レストランと呼ばれるようになります。
ハリボテとの違い
何が違うかというと、高単価ありきで価格を設定する場合と、サービスありきで価格を設定する場合とでは、提供するサービスの内容に差が出てしまうのです。
後者は、「高級さは後からついてくる」として、お客様に「価値ある店」と思ってもらえるように努力を積み重ねます。
そしてその結果、お客様に「高級レストラン」と認識してもらえるというわけです。
こうしたお店の特徴は、お客様は他のお店より高いお金を払ったにもかかわらず、「安い」と感じます。
こんな体験をしたことはありませんか?
めちゃくちゃ美味しい料理をたべてお酒を飲んだ時の払った金額が、前に行ったことがあるイマイチのお店と同じ金額で「安い!」と思ったことはありませんか?
他にも、座った椅子の手触りや座り心地、調度品のセンスを感じながら、満足感のあるおいし食事を体験したときに「このクオリティでこの価格はコスパがいい」と感じたことはありませんか?
これが価格を超える満足感の体験です。
「価値あるお店」を前提にデザインを考えていくと、こだわりを詰め込む過程で価値が言葉に変わり、店舗の内装や外装に現れてきます。それが、その店特有の高級感を出すことにつながります。
価格に見合う内装を実現するには価値を明確にする
「価格に見合った内装にするのが難しい」といったことを聞いたことはないでしょうか。確かに、あれもこれもとこだわりを詰め込んでいくと、予算をオーバーしやすくなります。
これを防ぐ方法は、お客様に提供する価値をできるだけ明確にすることです。明確にすればするほどデザインの過程で迷いにくく、「あれもこれも」と、過剰に後付けすることも少なくなるでしょう。
お客様に提供する価値という軸ができると、
- どのような内装空間であればお客様に喜んでいただけるのか?
- どのような内装であればより価値を感じてもらえるのか?
というふうに、お客様を軸に考えられることが増えていきます。それが、価格に見合う設計やデザインを把握することにつながります。
不快に感じさせない距離感を意識する
高級レストランで大切なのが、距離感です。この距離感には、
- 顧客同士の距離感
- お客様とスタッフの距離感
- 物どうしの距離感
という意味があります。
価格が高いお店ほど、これらの距離感をとても大切にしています。高級ブランド品のお店を想像してみてください。商品や販売棚を詰め込んでいないですよね。
客席の配置やお客様とスタッフの動線など、レイアウトする際は、適度な距離感を空けるように配慮しましょう。
お客様を明確にする
高級レストランの内装をデザインするうえで、お客様を明確にすることは不可欠な作業です。お店を利用するのはお客様です。そして、お客様が訪れてくれるからこそお店が繁盛します。理想のお客様を明確にすることで、デザインに細かな配慮ができます。
例えば、乳幼児を育てていて、家族で遊びに出かける機会の多い人を対象とした施設では、男女関係なくおむつ替えができるスペースを設置します。しかし、お客様を「女性」と限定してしまうと、「男性が子供のおむつ替えをしたい」というニーズを満たせません。これは、理想のお客様が明確になっていない結果です。
高級レストランの内装も同じで、いくら高いお金をつぎ込んだとしても、理想のお客様に響かなければ意味がありません。「どうやったら高級感のある内装になるか」と考える前に、「理想のお客様は誰か」を明確にしましょう。
絞り込むことと明確にすることを混同しないように注意する
お客様を明確にすることと、お客様を絞り込むことは、似ていますが意味は異なります。
内装をデザインする際に留意するのは、お客様を明確にすることです。
例えば、「男」「女」「一人暮らし」「4人家族」といったことが絞り込みです。「明確にする」とは、
- その人が日常をどのように過ごしていて、
- どのようなことに悩みや不満を抱えており、
- 望む未来は何か
を具体化することです。
最初からはっきりとお客様を絞り込むことは難しいですし、する必要はありません。具体化した人物像をもとにデータを集めた結果、女性や男性の比率がリアルにわかってきますので、その時点で絞り込むとよいでしょう。お客様を明確にすることと、絞り込むことを混同しないように気をつけましょう。
照明演出の使い方は慎重に
照明は、内装の高級感を演出するのに大きく影響します。そして、店舗の照明計画は、住宅のそれよりも難しい傾向にあります。
照明器具は配光や照度だけでなく「用いる光でどのように照らされるのか?」という空間全体での想像も必要です。作業用の明るさも必要であれば、演習面での光も必要です。
この2つは相反する光環境を必要とします。
「店内は○○のイメージだから、照明は■■のように使いたい」と考えていても、実際にやってみるとイメージとかなりずれてしまうことも珍しくありません。
照明については、専門家と相談しながら計画を立てることが賢明です。
まとめ
高級レストランの内装をデザインする際の考え方について説明しました。
考えるコツとして説明したのは、以下の7つです。
- 高級レストランの内装は“高い質”にこだわる
- 価格以上の体験価値を内装に落とし込む
- 価格に見合う内装を実現するには価値を明確にする
- 不快に感じさせない距離感を意識する
- お客様を明確にする
- 絞り込むことと明確にすることを混同しないように注意する
- 照明演出の使い方は慎重に
中には、内装デザインに直接結びつかないと思われるものもあります。しかし、全て内装をデザインする土台となる要素です。これらを踏まえたうえで、内装をデザインしているかどうかを確認するようにしましょう。
もし、
- 「理想のお客様を明確にするのが難しい」
- 「適度な距離感の空け方がわからない」
という場合は、専門家に相談しながら進めるとうまくいきます。弊社でも内装デザインに関するご相談を受け付けていますし、発行しているメルマガでは、関連した情報も含め出店の際に知っておきたい有益な情報をお届けしています。興味があれば、メルマガに登録してくださいね。
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