美容室開業の流れ|失敗しない知識
美容室開業のためには入念な事前準備が必要です。
- コンセプトやプランニングを練り
- 事業計画書を作成して資金計画を立て
- 物件を選び広告宣伝を行う
といった手続きのすべてを、細心の注意を払いながら行う必要があるのです。
この1つ1つの手続きが開業後の命運を分けるといっても過言ではありません。
何だか難しそうと思ったという人のために、ここでは美容師として開業するために知っておくべきポイントや資金額の相場に配分、失敗例と注意点および美容師の開業をサポートしてくれる専門家を紹介します。
目次
美容室開業で知っておきたいこと!独立のために必要な準備
美容室を開業するためには、まずはどのような準備が必要かを確認します。地図すらない状態でスタートしても、正しいゴールにはたどり着けません。
スムーズな開業、そして安定した運営を続けておくために、まずは
- コンセプトの検討
- プランニング
- 資金計画
- 事業計画作成
- 出店候補地選定
といった事前準備からチェックしていきましょう。
美容業界の情報収集
美容室開業を成功させるために、最初にすべきことは美容業界の情報収集です。
しかし、この記事を読んでいるあなたは、仕事の空き時間をつかって他の美容室の情報も集めている努力家だと思います。そこで、このステップでは情報収集の方法ではなく、美容業界を俯瞰(ふかん)して見る方法に触れます。そして、どんな美容室を開業すべきなのか検討しましょう。
基本的な情報を仕入れておくことで、開業後のイメージに合わせた事前準備が可能になるからです。
俯瞰して考える1:美容業界の現状
全国の美容室軒数は増加傾向にあります。2017年は24万299件と前年に比べると2,744軒増加しています。
コンビニエンスストアの数が約4万6,000件であることを考えると、5倍以上もの数の美容室が全国にひしめいているということです。2014年から2017年までで、年に約3,000軒ずつ増加しています。
しかし、その勢いに反して美容室業界の売上高は減少傾向。
毎年1万軒ほどが新規にオープンしているのにも関わらず、増加軒数が約3,000。ということは、それだけ多くの美容室が閉鎖(移転)しているということです。その為、美容師業界の現状は決して楽観視できるものではないと言えます。
ポイント
この様な状況は美容業界だけではありません。飲食業界も同じです。では、競争が激しい中でも永く運営するにはどんなお店をつくればいいでしょうか?
一つの事業として捉え、売って売り続けるためにはどうすればいいのか具体的な考えを持ちましょう。
俯瞰して考える2:美容業界の厳しさについて
「厳しい」というイメージのある美容業界ですが、実態はどうなのでしょうか。
実は、美容師の離職率は非常に高いことで知られております。一説では美容師として従業を開始してから約70パーセントの人が何らかの理由で辞めてしまうと言われています。
また、美容師個人に限らず「サロン生存率説」という説によれば、オープンした新サロンのうち3年以内に閉店するサロンの割合が約70パーセントということです。
これらの数字だけを見ても、新規に美容室を開店して経営していくことがいかに難しいかが読み取れるのではないでしょうか。
また、経営の難易度は、美容室をオープンする場所によって異なります。都市部は市場が大きいので必然的に美容室数も多くなります。常連客を抱えるような高級サロンを除き、低価格競争が激化しています。
新規客専用のクーポン効果で客が常連化しにくいというのも悩みどころです。一度低価格競争に巻き込まれると抜け出せなくなります。その為、クーポンに頼らずに固定客を増やすスタイルが勧められることもあります。
ポイント
お客さんが美容室に来てくれる理由を考えましょう。例えば、「髪が長くなったから切りに来た」という理由では、すぐ近くにある他の美容室が少しでも安ければ、他のお店に行ってしまいます。
あなたのお店にお客さんが来てくれる理由はなんでしょうか?じっくり考えて言語化しましょう!
美容室開業方法の検討
美容室を開業する方法は大きく分けて4つあります。のれん分け、フランチャイズ、業務委託型、オリジナルですが、順番に紹介していきましょう。また、開業にあたって「ここだけは外してはいけない」重要なポイントも詳しく見ていきます。
美容室開業の方法1:社内のれん分け
開業方法その1が、「社内のれん分け」です。
これまで美容師として勤務していた美容室の経営者(本部)と、のれん分けの契約を結ぶことを指します。のれん分けには、美容室を開業するにあたって、そののれん元の美容室の名前や経営ノウハウを使用することができるというメリットがあります。
もともとの勤め先との契約ということで、その美容室の内情や人間関係、地域的な売りも把握した状態でスタートできます。最初から比較的安定した経営が期待できます。
デメリットは、美容室開業の初期費用をすべて負担しなければならないことです。
また、サロン名や経営ノウハウを使用する代わりに、のれん元に対してロイヤリティを支払う必要があります。
美容室開業の方法2:フランチャイズ
フランチャイズによる美容室開業は、基本的にはのれん分けと同じです。異なるポイントは、「その美容室での勤務経験がない」という点でしょう。よって、経営のノウハウや美容室のシステムに馴じむまで、多少の時間はかかります。
フランチャイズを行うのは規模の大きいサロンであることが多いです。その分「ブランド力」と「集客力」は期待できます。のれん分けと同様、開業当初から比較的安定した経営が望めると言えます。
美容室開業の方法3:業務委託型サロン
業務委託型のサロンとは、髪を切る美容師と経営者(パートナーと呼ばれる)が別で、役割が完全に分担されているサロンを指します。
お店を開業した経営者はサロンの運営と初期費用等の出費などの経営面でのサポートを行い、フリーランスの美容師が髪を切る形態です。
フリーランスの美容師にとっては、初期費用をかけずに自分のサロンをオープンした様な思いで働けるメリットがあります。しかし、パートナーがサロンの運営について大きな利害関係を有している以上、パートナーの意向を無視した運営はしにくいでしょう。
美容室開業の方法4:オリジナルサロン
最後に、完全に1から自分オリジナルでサロンを開業する方法です。
こちらは、のれん分けやフランチャイズと違ってロイヤリティの支払いがありません。もともとのノウハウや経営システムの縛りもありません。また、業務委託型のサロンのように絶えずパートナーの意向および利害に気遣った運営をする必要もありません。
運営も経営も自分のやりたいようにやれるというメリットがあります。
反対にいうと、既存のノウハウもなく、大手サロンのブランド力や集客力に頼ることもできないのです。美容室開業の成功も失敗もすべてが自分の手腕にかかってくるということです。
この場合、見た目や雰囲気についてはある程度イメージができるかもしれません。しかし、開業後の課題となる
- 「売ること」
- 「売り続けること」
を考えることに労力や時間を割けないまま開業しているケースが多いです。
早め早めの準備を進めましょう。まずは事業のコアとなるコンセプトを考える事から始めましょう。とても時間と労力がかかる作業です。コンセプトについては次のステップで解説します。
美容室開業の計画の確立
美容室を開業するにあたって重要なのが、事前の計画(段取り)を綿密に、具体的にまとめ挙げておことです。ここでは、美容室を新規に開業したい人が順番にとりかかるべき5つのステップを紹介します。どのステップもサロン開業に欠かせないので、詳細に確認してください。
コンセプトの検討
美容院を開業する事前準備の第一段階は、コンセプトの検討です。コンセプトは、そのサロンの理念、基本的なルール、イメージを指すと考えましょう。「どのようなサロンにしたいのか」を念頭に考えます。そして、
- 何を売りとするか?
- サロンの雰囲気は?
といったことを具体的に決めていきます。
また、ターゲットとする客層を決めることも含まれます。
ターゲットが
- 若い女性なのか?
- 落ち着いた年齢層なのか?
などをまず決定することで、開業後の運営方法も変わってきます。入念な情報収集や日々の勤務経験などを踏まえて、よく考えるようにしましょう。
コンセプトの決め方は『店舗のコンセプトを決める正しい方法と知識』を読んでください。コンセプト決定に対する正しい考え方を解説しています。
プランニング
プランニングの段階では、客数や客単価の目標を設定します。そして、その目標を達成するための戦略を練ります。大体の目安となる面積と席数をお伝えしますので参考にしてください。
- 10坪:セット面2〜3、シャンプー台1
- 11坪〜14坪:セット面3〜4、シャンプー台2
- 15坪:セット面4、シャンプー台2
「客数」は「新規の客数」と「固定(常連)の客数」に分けます。客単価は「技術単価」と「物販単価」に分けます。そして、それぞれの項目ごとに目標を立てるのです。
最初に目標を具体的に定めておくことで、どのような運営をすれば達成できるのかがイメージしやすくなります。
戦略を練るにあたっては、ターゲット層、オープン予定の地域から分析したり、独立して成功している同業者などに話を聞いたり、マーケティングの専門家に聞いたりして、できるだけ多角的に運営を分析することが重要です。
資金計画
開業準備のステップのなかで最も重要なのが「資金計画」です。
しかし、簡単に「資金計画を立てましょう」と言われても、なかなかピンとこないものです。考え方のスタート地点をはっきりさせることから始めましょう。
考え方のスタート地点とは、開業資金を準備するために「融資をいくら受ける必要があるか」というポイントです。手元の自己資金から、「設備資金」と「運転資金」を併せた金額を引いて出た額を、最低限必要な融資額と考えます。
設備資金と運転資金の合計額は、オープンしようとしているサロンの規模や従業員の数などによって大きく差が出るので一概には言えませんが、900万〜1,200万みておいたほうが良いでしょう。
より詳細な内装工事費用の目安はこちらの記事を参考にしてください。
参考:店舗内装工事とは?工事の流れ・費用の基本と失敗しない業者の選び方
自己資金や融資によって用意できた開業資金を、設計費用・内装工事・美容器具にどのくらいあてて運転資金をいくら残すかといった内訳をスタート時点で考えておくことが、開業後の不安を取り除くためにも重要なのです。
事業計画書作成
大体の資金計画が作成できたら、続いて事業計画書の作成に入ります。
事業計画書とは、融資を受けるために提出する書類のことです。融資が承認されるか否かの決定に多大な影響をおよぼします。よって、事業計画書を作成する際は説得力を持たせるために入念な情報収集、作り込みが不可欠です。
事業計画書には、独立開業の動機、事業経験の有無、取扱予定のサービス内容、資金の調達方法、事業の将来的な見通しなどを内容とするのが一般的と言えるでしょう。事前に検討、イメージしておいたコンセプトやプランニングを、事業計画書へと具体的に落とし込むことが重要です。事業計画書を作り込んでおくことが、将来的な経営基盤の安定にもつながります。
ポイント
事業計画書をわかりやすく細分化すると、1.お金の動き(キャッシュフロー)・2.戦略(売るための考え)・3.評判(売り続ける為の考え)・4.初期投資費用といった4つの内容を言語化すると、いい事業計画書が作れます。
戦略や評判について考えがまとまっていない人は、私たちが提供している価値あるお店づくりのヒントから学びましょう。
価値あるお店づくりのヒントはこちらから
出店候補地選定
事前準備の5ステップの最終段階が、出店候補地を選ぶことです。
出店地は、一度選んで手続きを進めてしまうとそう簡単に変更できるものではないので慎重に決めましょう。
- その地域のライバルサロンと競合していけそうか?
- 周辺の施設や交通量は多いか?
- 人口や世帯数の分布はどうか?
など、事前に調査しておくべきポイントはさまざまです。
調査を行う際は、インターネットの情報だけを鵜呑みにするのではなく、最低でも一度は自分の目で現地を確認しに訪れることをおすすめします。
美容室開業に必要な資金はどれくらい?内訳や相場について
美容室開業費用の相場は約1,200万〜1,400万円と言われています。
この全額を自己資金のみでまかなえるという人は少ないです。多くの場合は不足分を金融機関などからの融資などによって補う必要があるのです。
ここからは、美容室開業の必要資金やその内訳など、気になる開業時の金銭面の説明に入りましょう。
美容室開業での資金内訳
まずは、開業資金のうちに占める割合の高い順番にその内訳をみていきます。順番だけまず簡単に紹介すると、
- 1番が内装費
- 2番が器具や設備費
- 3番が運転資金
- 4番がテナント賃借費用
- 5番が営業保証金、FC加盟金
です。
資金内訳1:内外装工事費60%(そのうち設計料7%~5%)
美容室開業の資金のうち、もっとも高い割合を占めるとされているのが内装や外装の工事費です。その割合はなんと60パーセント。それ以上かかっているお店もあります。
開業費用を約1,400万円と仮定します。すると、実に約840万円を工事費にあてることになるのです。このように高い割合を占めるのが内外装工事費です。だからこそ、開業費用の節約を考えるうえでは最初に目をつけるべきポイントと言えます。
近年では資材の高騰や人手不足の影響から工事単価が上がり続けています。ただ安く作ろうとしてもチープな印象のお店になります。
ポイントは、工事見積もりを的確に相見積もりできるかどうかにかかっています。
また、依頼する会社によって設計と施工を分けている事もあります。依頼する会社によって設計料が違います。出来るだけ早い段階で問い合わせをすると安心です。
資金内訳2:美容器具・什器・備品等15%
内外装工事費用に次いで費用がかかるのが美容器具や什器などの備品で、その割合は開業資金の15パーセントとされています。セット面、シャンプー台にボイラーなど、1つ1つが値の張ります。特にシャンプー台を何台設置するかによって全体の費用にも大きな差が生じるでしょう。
運転資金15%
運転資金は、美容室開業の全体資金の16パーセントが相場と言われています。開業直後の経営が不安定な時期を安心して乗り切るためには、運転資金をできるだけ多く残しておく必要があるので、内外装工事費や備品代を節約するなどの工夫が肝要です。
資金内訳3:テナント賃借費用10%
開業用のテナントを借りるのにも、結構な額の初期費用がかかります。その割合は開業資金の11パーセントとされており、敷金や礼金、数カ月分の前家賃などがその内訳です。一般的に路面店舗の賃借費用は高く、ビルの上層階など人の目にとまりにくい店舗は安いとされているため、その部分でもテナント初期費用の差が出るでしょう。
資金内訳4:+営業保証金・FC加盟金
フランチャイズ開業の場合は、開業時に営業保証金やFC加盟金をフランチャイザーに支払わなければならない場合があります。この営業保証金については契約書に記載されているので、事前にチェックしておきましょう。開業資金の2パーセントがその割合とされています。
美容室開業の一般的な資金相場
美容室開業資金の相場は、一般的に約1,200万円〜1,400万円です。その内訳は先述した通りですが、セット面やシャンプーの台数、家具などを特注するかどうかなどによってもかかる費用は変わってきます。
オープン後の経営が不安だから運転資金をできるだけ多く確保したいという人は、設備や内装費用を節約する方向で検討するか、自己資金が貯まるのを待つのが良いでしょう。
経営形態による資金相場の違い
開業費用資金の相場は一般的に約1,200万円〜1,400万円とされていますが、もちろん経営の形態、自己資金、店舗の規模、従業員の有無、立地条件などによって差が生じます。
約1,200万円〜1,400万円はあくまで目安として考え、自分にはいくらの開業資金が必要になるかを具体的に算出しておくのがベストです。
以下で、サロンの経営形態による必要資金の違いを簡単に説明します。
社内のれん分けサロンの場合
社内のれん分けサロンの場合は、初期費用は全額自分で負担する必要があります。また、ロイヤリティを本部サロンへ支払う必要があります。そのため、開業後の運転資金も含めて多く見積もっておきましょう。初期費用が多めというのはデメリットと言えます。しかし、本店の経営ノウハウを基本原則とした盤石なサロン運営が開業直後から期待できるというメリットがあります。
フランチャイズのサロンの場合
このケースでは、資金相場は相場より低くなります。フランチャイズのなかでも、店舗の内装をほぼ統一するというような方針をとっているサロンの場合は、内装費用や設計施工費用を相場よりも低く抑えることができるからです。
ほかにも、宣伝広告や求人の告知も他店舗と同時に大々的に行うことができるため、そういったマーケティングコストも低く抑えることができます。
業務委託型のサロンの場合
業務委託型のサロンであれば、投資者兼経営者であるパートナーが開業資金を負担します。つまり、開業者は開業費用をどうやって捻出するかといった問題がらみで頭を悩ませることも少なく、サロンの運営に専念することができます。
オリジナルサロンの場合
オリジナルサロンの場合は、開業資金の一般的な相場である約1,200万円〜1,400万円よりも高めに見積もっておくのが良いでしょう。というのも、オリジナルサロンの場合は開業の初期費用のすべてを自分で用意しなければならないからです。
初期費用というのは、物件取得費用や内装(外装)工事、設備費用に限りません。宣伝のために各種広告媒体へ支払うマーケティング費用といった、付帯的な費用も漏らさずに計算に入れておかなければならないのです。
ポイント
美容室を開く上で選ぶ物件によっては、美容室専門の給湯設備「ダンリュウ」を使わなければならないケースもあります。ダンリュウは能力やサイズによって金額が違いますが、1台80万〜100万近い金額です。美容設備を買うだけでも高額な費用がかかりますので、独立当初は中古機材を使うことも視野に入れると初期コストを抑えられます。
一人で経営する場合
最後に紹介するのが、サロンを1人で運営および経営していくケースです。この場合、開業資金を一般的な相場より低く抑えることができるでしょう。一人経営ではサロンの規模は小さくなりますが、相場の3分の1程度の金額で済んでしまう可能性もあるのです。家賃を10万代に抑えることができれば、初期費用が抑えられた低コスト開業も可能という事例もあります。また、開業にあたっての初期投資が少ない分、運営リスクも抑えることができるのです。
ただし、「お金をかけなで開業できる」という考えはやめましょう。お客さんがお金を払い、対価としてあなたの美容室からサービスを受け取ります。ある程度の初期投資はかけて事業を永く運営できる事を考えましょう。
美容室開業での主な資金調達先
開業資金を自己資金だけでまかなうことができない場合、融資などによって調達しなければなりません。
美容室開業のための資金調達先としては、
- 日本政策金融公庫
- 親の代から関係のある地銀や信金
- 地方自治体の制度融資
- リース契約
- クレジット
などがあります。
なかには返済義務のない補助金、助成金の制度も。順番に紹介していきましょう。
融資を受ける
美容室開業資金の調達のために最も多く利用されているのが、「日本政策金融公庫」による融資です。
日本政策金融公庫の融資は初めて開業する人に評判です。なので、開業資金を調達するためには利用しやすいと言えます。また、保証人や担保面での柔軟な対応が望める点や、長期返済でも利息が固定金利である点も、開業資金の融資を受ける側にとってはうれしいポイントです。
日本政策金融公庫からの融資以外にも、地方自治体の制度融資や銀行の融資が選択肢として挙げられます。
資金調達先
・日本政策金融公庫(開業者が最も融資を受けやすい)
・地方自治体の制度融資
・銀行の融資(開業者が融資を受けづらい)
補助金(助成金)制度の利用
美容室の開業費用として利用できる補助金(助成金)としては、「創業(第二創業)補助金」「トライアル雇用奨励金」「キャリア形成促進助成金」などがあります。
補助金や助成金の1番のメリットは、なんといっても返済義務がないということです。開業費用の節約のためには、真っ先に活用を検討したい制度ではないでしょうか。
しかし、その申請手続きは応募期限が決まっていたり、要件が細かくて理解しにくかったりと複雑であることが多いため、まずは専門家へ相談することをおすすめします。
リース・クレジットなど
リース契約は、リース企業がサロンの代わりに必要な商品を購入し、それを開業者に貸し出すという内容が基本です。契約の種類は「賃貸借契約」で、開業者はリース料を毎月支払っていくことになります。
リース期間は一般的には5年で、支払回数は60回です。
クレジット払いは、回数を選んで分割支払いをしていくという点でリース契約と共通していますが、商品の所有者になることができるという点で大きく異なります。
リース契約もクレジットも、初期費用を抑え、返済方法の計画を立てやすくするというメリットがあるのです。
開業準備は何から始める?美容室オープンまでの流れとは?
ここでは、開業準備からオープンまでにどのような手続きを要するかを段階的に説明していきます。開業準備をきっちりと行うためには複雑な手続きの数々が必要になるので、いつまでにどうするかというタイムスケジュールを意識しながら読み進めましょう。
流れ1:資金調達
まずは資金調達です。融資を利用する場合ははじめに融資の申込みを行います。その後、金融機関などと融資契約を締結します。
申し込み先は日本政策金融公庫、地方自治体、リース会社など目的によってさまざまです。申し込みにあたってどのような書類が必要かは機関によって多少の差があります。事前に確認しましょう。しかし、事業計画書はどこに申し込む場合でも必需品と言えます。
融資が承認されると、指定日に資金が指定口座に振り込まれます。
金融機関の融資は前払いです。しかし、助成金や補助金、銀行によっては後払いのケースもあります。事前に確認しておくことをおすすめします。
融資は申し込みから約1ヶ月〜1ヶ月半程度かかります。
流れ2:物件選び・契約
続いて、物件選びと契約の流れについて説明します。
物件を選ぶ際は、自分のなかのイメージに基づいた店舗づくりに、その候補物件が適しているかの確認が重要です。また、必要な設備がそろっているような物件であれば、設備が問題なく使用できるかなどの確認も必須と言えるでしょう。
スケルトン物件について
スケルトン物件とは、なんの内装も設備もない物件です。いわばまっさらな状態の物件を指します。スケルトン物件のメリットがあります。すべて自分の店舗イメージ通りに作ることができるという自由度の高さです。
デメリットとしては、やはり1からすべて揃える分、初期費用が高くなります。そして施工期間が比較的長くなってしまう点などが挙げられます。
スケルトン物件に美容室を開きたい方はこちらの記事も参考にしてください。
居抜き物件について
居抜き物件というのは、以前使用していた設備や内装をそのまま引き継ぐ物件です。といっても、設備などの使用については前オーナーと事前に交渉しておきましょう。
物件によっては造作譲渡費がかかります。中にはとても高く設定している物件もあります。注意しましょう。
居抜き物件は内装工事費や設備投資費を抑えることができるというメリットがあります。しかし、設備が古くなっていたり壊れているケースもあります。その場合、修繕・解体費用がかかるというデメリットも考えられます。
居抜き物件を選ぶ際は、そういった面をきちんと確認しておくことが重要です。
流れ3:内装の設計デザイン・内装工事
続いて、内装工事の流れを見ていきましょう。
まずは内装工事を施工する設計、施工業者との契約締結が第一段階です。美容室の設計や施工を依頼出来る会社は3種類あります。思い描いた理想の空間を演出するサロンを実現するためにも、いくつかの業者に相談をもちかけるのが良いでしょう。
設計、施工会社の決定・サロンデザイン決定
設計会社や施工会社を選ぶ際には、メインターゲットとなる客層、メニュー内容、1日の予定施術客数、従業員数といった情報を欠かさずに伝えます。
それによって、サロン開業に必要な規模や必須設備が決定するからです。
また、美容サロンを手掛けた経験が豊富な施工会社を選ぶことをおすすめします。サロンデザインの依頼にあたっては、テイストなどの意向をできるだけ詳細に伝えましょう。
大抵の設計施工会社はデザイナーを抱えていますが、
- 理想の店舗にしたい
- 差別化のある店舗にしたい
- どうしても依頼したいデザイナーがいる
といった場合は、設計と施工を別々で依頼することも可能です。
ただし、自分一人では決めずらいと思いますので、下記に判断基準を記載します。
- 特にこだわりがない人、開業までの時間がない人:設計と施工を一括で請け負う会社に依頼
- ブランディングも視野に入れてこだわりたい人:設計と施工を別々の会社に依頼
一つの目安としてご利用ください。
施工業者との契約・着工
施工業者が決まったら契約を行います。
契約後に内装などの大規模な変更を行うと、工期や事業計画に支障が出るおそれがあるため、そういった事態にならないよう入念な打ち合わせのうえ、契約書を作成しましょう。
費用は、500万円以下の工事なら契約時に半金を、工事完了時に半金を支払うことが多いです。500万円を超える場合は2種類あり、500万以下の工事の場合と同じか、契約時と工事完了までの中間期、そして完了時の3回に分けて支払う方法です。
契約が無事に終われば、いよいよ着工開始です。
流れ4:各種届出について
開業の事前手続きとして忘れてはいけないのが、保健所や税務署、労働保険監督署、ハローワークなどへの届け出です。どの機関にどのような届け出が必要なのかを、順番に解説していきます。また、届け出るべき期間も定められているので、忘れずにチェックしましょう。
保険所への届出書類
各自治体への登録をするために、保健所に対して開設に関する届け出の申請を行います。申請書類は開設届や平面図、登記簿謄本などです。期間は開業の10日から1週間前までなので、忘れないようにしておきましょう。また、着工開始までに保健所と事前相談しておく必要もあります。
管轄の消防署への届出書類
消防検査によって、内装・外装が防災基準をクリアしているかどうかを確認するために、管轄の消防署への届け出も必要です。詳しい条件、必要書類については管轄の消防署や施工業者への確認が必須と言えます。この届け出は内装設計時にしておかなければなりません。
税務署への届出書類
まずは、開業後1カ月以内に「開業等届出書」を税務署に提出します。その後も必要に応じて、開業後1カ月以内に給与事務所等の開設の届出書を、開業後2カ月以内に所得税の青色申告承認申請書や青色事業専従者給与に関する届出書を、そして確定申告前には所得税の減価償却資産の償却方法の届出書を提出しなければなりません。また、随時、納期の特例適用者に係わる納期限の特例に関する届出書や源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書も提出します。
都道府県税事務所市町村役場窓口への届出書類
市県民税の手続きのために、開業等届出書を都道府県税事務所市町村役場窓口に提出する必要があります。届出時期については、基本的には開業後速やかにとされています。しかし、詳細な部分では自治体ごとに異なるので、事前に確認しておくのが良いでしょう。
流れ5:設備調達(シャンプー台など)
次に、設備調達の手順を見ていきましょう。シャンプー台などの設備を選ぶ際に最も参考にすべき点があります。それは、そのサロンのコンセプトに基づいて決定したメニューです。商品によって座り心地や機能に違いがあります。そのため、どれを選ぶべきか決断しかねる人もいるのではないでしょうか。
設備を選ぶ際は、予定しているメニューを最大限サポートしてくれるかどうかを判断基準とすることをおすすめします。
備品準備
続いて備品準備です。プランニングの段階で定めておいた物販単価の目標を達成するためには、どのような備品を調達しておくべきかを検討しましょう。常連客を増やすためには、質の良いホームケア製品を充実させておくことも重要です。ターゲットの客層やコンセプトも参考にして、多角的な視点から選ぶことが重要です。
採用活動
サロンを運営していくうえで
- 「いかにして優秀なスタッフを雇うか」
- 「いかに美容室の雰囲気にあったスタッフを雇うか」
というのは重要なポイントです。
美容師は専門職であると同時に接客業でもあるとされています。そのため、技術とコミュニケーションの両面で優れたスタッフを探したいところ。美容師の採用活動は、求人会社や広告企業との契約によって行われるのが一般的です。
最近の美容業界は、どのサロンでも働き手が不足している状況にあります。よって、優秀な人材を確保するのは容易ではありません。しかし、妥協せずにサロンのイメージに合った人材を探しましょう。
販促活動(オープン告知など)
美容室開業を広く知ってもらうための販促手続きを見ていきましょう。販促活動をせずとも集客できるというサロンはまれです。多くのお店は広告業者との契約によってホームページやSNS、クーポンサイトの活用、チラシやDMなどの集客プロモーション活動を行います。
紙媒体とネット媒体のどちらを選択するかは、コアターゲットとなる客層を踏まえて検討しましょう。
ネットに慣れ親しんだ世代がターゲットであればネット媒体を、そうでない世代をターゲットとするなら紙媒体をと、分析の結果をもとに柔軟に対応することが大切です。
失敗例から学ぼう!美容室開業の注意点
少々意味が異なりますが、「失敗は成功の母」ということわざに表されるとおり、他人の失敗は自己の成功へのヒントになりえます。
美容室運営を成功させるためには、失敗例から学ぶことも重要です。ここからは、美容室開業の失敗例を元に、開業時の注意点を紹介してきます。
失敗理由
美容室開業の失敗理由はそれこそ十人十色で、さまざまなものがあります。資金面、物件選び、事前準備のそれぞれの面で代表的な失敗例を紹介します。理想のサロンづくりに役立てましょう。
失敗1:資金不足による失敗例
まずは資金不足による失敗例を紹介します。
これは運転資金にあてるための自己資金が少ない状態です。初期費用の配分を間違えてしまい、開業後の赤字状態を脱することができないのです。その後、経営が立ち行かなくなり、借金だけが残るというケースが当てはまります。
失敗2:立地・物件調査不足による失敗例
まずは居抜き物件にまつわる失敗例です。
居抜き物件は初期費用が安く済むことがメリットです。しかし、安いだけを理由に居抜き物件に飛びつくと、思いもよらない失敗につながりかねません。
- 前のサロンの評判が非常に悪い
- お客さんがより付かなくなっている
- 既存の内装を買う費用が高い(造作譲渡費)
- 以前の利用者の使い方が悪くて設備がボロボロ
- 給排水のメンテ不足で詰まりやすい
など、
これらマイナス点を抱えたまま、新サロンをオープンするのは至難の業です。
また、立地が悪く集客力の弱い物件やサロンに向かない物件を借りてしまったなどの失敗例もあります。しかし、立地が悪くても根強いファンを集客するお店はたくさんあります。立地は美容室の戦略次第ともいえます。
他にも、開業予定地の将来的な開発予定を調べていなかったことです。開業後、近郊に巨大ショッピングモールができて人の流れが変わって集客力が弱まってしまったという失敗談も踏まえておくべきでしょう。
失敗3:計画不足による失敗例
美容室開業にあたっては、とにかく綿密に計画を立てることが重要です。その部分を適当に済ませてしまうと、とんでもない失敗を犯す事態になりかねません。
例えば、事業計画書を作成せず、自分の感覚だけでサロンを開業した失敗例です。
事業計画書には、「何を」「いつ」「どこで」「どのように」「どうする」という、基本的な運営基盤が反映されます。それを作らないままに開業すると行き当たりばったりの経営になり、例え技術力があったとしても集客や固定客確保もままならず、果ては閉店という道をたどってしまうおそれがあるのです。
また、開業資金が少なく済むので一人で営業できる規模で開業したケースです。開業後数年は良かったものの、病気やけがで売上が立たなくなり失敗したケースです。
また、開業すればお客様がたくさん来ると楽観的に構えていたが、予想に反して全く来ずに失敗したケースもあります。やはり、事前準備や見通しの甘さが失敗につながるのだと言えるでしょう。
対策
ここでは、上記のような失敗を防ぐためにどのような対策をとるべきかを紹介します。やはりサロンを安定して運営していくためには、失敗のリスクをなるべく減らすという対策を行うことが重要です。
失敗例事に対策を紹介していますので、参考として留めておくことをおすすめします。
資金不足による失敗への対策
資金不足による失敗を防ぐためには、初期費用の配分を十分に検討し、運転資金に余裕をもたせておくことが重要です。
運営費用についても適当に計算せず、何にどのくらいのお金がかかるのかは事前に細かく計算し、十分すぎるほどの準備をしてから開業しましょう。
運転資金は3ヶ月〜5ヶ月程度を目安にすると安心です。
立地・物件調査不足による失敗への対策
どういった物件がサロンに適しているかは、やはりプロでなくてはわかりにくいことが多いです。お金で解決できる問題なのか、そもそも美容室開業が無理な物件なのか専門家のサポートを受けましょう。
立地や物件の調査不足による失敗を防ぐためには、専門家への相談が不可欠と言えるでしょう。
また、居抜き物件を検討する場合は、前のサロンなどがなぜ廃業したのかを事前に調査し、対策を練る必要があります。
悩みを解決!美容室開業のサポートはプロに相談!
安心して美容室を開業するためにクリアすべき関門は多岐にわたります。特に物件選びや事業計画書の作成、開業資金の配分は専門家のアドバイスが必須です。美容師の独立開業をサポートする業者やサイトは数多くあります。これからオープンするマイサロンを安定して運営していくためにも、そういった美容室開業のサポート会社の利用を検討してみてはいかがでしょうか。ここからは、主なサポート会社などを紹介します。
美容室開業をサポートしてくれる会社への相談
美容室や理容室の経営に特化した美容室開業専門業者がいます。コンサルティングを行う会社では、独立を志す美容師の開業・独立・出店を総合的にサポートしてくれます。
開業支援を行う業者は多数あります。しかし、美容室経験が豊富なだけに、事業計画書や設備、マーケティングなどのサポートの安心感は抜群です。
しかし、設計や工事以外にコンサルティング費用がかかります。また、コンサルタントによって美容室開業に対する考え方が違います。これらも理解しておきましょう。
融資サポートへの相談
融資のサポートは、やはり会計や税務の専門家にサポートしてもらうのがベストです。自力でなんとか事業計画書を作成するケースもあります。ですが、融資が承認されるかどうかは提出してみなければわかりません。
その点、専門家に相談すれば、融資の通りやすい事業計画書の作成ポイントをきっちりと押さえることができるのです。専門家に相談したからといって必ずしも融資が承認されるとは言い切れません。しかし、それでも自力のみで作成するより承認率は高くなるでしょう。
デザイン会社・施工会社への相談
美容師の開業支援を行っている会社のなかには、店舗デザイン、施工管理から資金調達や開業後のサポートまでトータル支援を行っている会社もあります。
デザインや工事のことはデザイン会社や施工会社と相談することもできます。しかし、トータル支援型の業者なら事前準備から開業後までのすべての流れにおいてサポートが望めます。より客観的に先々を見据えたアドバイスが期待できます。
ただし、専門分野以外のことも担当者の感覚でアドバイスしてしまうこともあります。実際に、店舗デザインや工事の経験は豊富です。しかし、それら以外の専門分野の経験や実績がなくてもアドバイスしてしまう人もいます。注意しましょう。
理想を現実に!目指す美容室に向けての準備はプロに相談しながら進めよう!
美容室開業は多種多様な事前準備が必要なうえに、時間との勝負でもあります。また、事前の具体的な計画なしに勢いだけで開業してしまうと、運営面でつまずく危険性も高くなります。
内装や外装の理想の実現をはじめ、無駄な時間とコストを減らし、お客様のニーズに応え続けることを可能にする。そして、開業後も相談し続けることができる。このように、イメージ通りのマイサロンを安定して運営していくためにも、まずは美容室開業サポート業者へ気軽に相談してみることをおすすめします。
また、定期的に「おしゃれで上質な美容室を開く」個別相談会を開催しています。詳細は、弊社発行のメルマガ(無料)にてお伝えしています。興味があったら登録してくださいね。
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