美容室開業!成功の手順とキーポイント
あなたは美容師として技術やマネジメント業務の経験を積み、独立して自分の美容室を開きたいと考えているのではないでしょうか。
美容室開業に必要な作業は、多岐にわたります。今のお店で仕事をしながら美容室開業の準備を進める場合は、事前に必要な作業を整理し、行動することがポイントです。
本記事では、美容室を開業するための手順を丁寧に解説します。
美容室に必要なものや前提知識
開業を考える前に知っておくべき基本的な情報や知識があります。美容室を開業するための免許や資格、そして業界全体の動向や現状を把握することで、より確固たる基盤の上でビジネスをスタートさせることができます。
このセクションでは、開業を成功させるための前提となるポイントを探っていきます。
美容師免許や資格に関する情報
美容業界で活動する基本的な資格は「美容師免許」です。しかし、美容室を開業・経営する際にはさらにいくつかの資格や考慮点が必要となります。中でも「管理美容師」は非常に重要です。
この資格は、美容室の経営者や店舗の責任者が持っていることが求められるもので、店舗の適切な運営や、従業員の指導・監督を担当する役割があります。管理美容師としての資格取得には、一定の実務経験が必要とされる場合があります。
その他にも、特定のサービス提供や新しい技術を導入する際に、追加の資格や研修の受講が求められることも考えられます。美容師免許の基本情報とともに、管理美容師やその他の関連資格についても情報を集めておきましょう。
美容室業界の現状やトレンド
美容業界は、技術の革新や消費者のライフスタイルの変化とともに急速に変化しています。近年、サステナビリティを重視した製品の需要が増加しています。オーガニックやヴィーガン製品が主流となってきています。
また、デジタル技術の進化が目立ちます。ARを活用したヘアスタイルのシミュレーションやオンラインでのカウンセリングが増えてきました。このようなトレンドを踏まえた上で、どのようなサービスや製品が求められるのか、どの技術に投資するべきなのか、という点を明確にすることは非常に重要です。
これらのトレンドに対応するための具体的なアクションや取り組み方を検討しましょう。美容師やサロンオーナーは、これらの情報をもとに、事業戦略の見直しや新しいサービスの導入を検討しましょう。
美容室成功への具体的手順と流れ(やることリスト)
美容室の開業を成功する道は、明確な計画と継続的な努力に支えられています。特に美容業界では、市場の変動や新しいトレンドに迅速に対応する能力が求められます。まず、自身のビジネスモデルやサービスを明確に定義します。そして、目標を設定することから始めます。
次に、顧客のニーズや期待を理解しましょう。
それに基づいたサービス提供やマーケティング戦略の策定が不可欠です。また、最新の技術や製品についても必要であれば導入しましょう。業界のイノベーションを常に追い求める姿勢が重要となります。このセクションでは、これらの手順を具体的に解説し、美容業界での成功への実践的なステップバイステップのガイドを提供します。現場での実用性を最大限に活かすためのアドバイスも織り交ぜています。
経営戦略・事業計画(開業6~8か月前)
美容室を開業するにあたり、最初にする作業は、店舗の土台作りです。土台とは、美容室事業を経営する上で必ず必要な事を示します。建物を建築することに置き換えれば、建物の基礎工事と同じです。
強固な基礎が作れれば、安定した家を立てられる様に、安定した経営を目指すことができます。
具体的に必要なことは、以下の項目が挙げられます。
- 美容室のコンセプト
- 顧客設定
- 経営戦略作成
- 事業計画作成
美容室のコンセプト
例えば「40歳以上の女性向け髪質改善専門店」というふうに、お店についてテキスト化したものをコンセプトといいます。
コンセプトは、「どのような美容室か」ということを言葉で説明するうえで非常に重要です。また、メニュー構成や店舗デザインの方向性などを決める際の軸となります。その他、お客さんに美容室を宣伝したり内装のイメージを業者に伝えたりするなど、コンセプトは美容室開業に不可欠な要素といえます。
美容室を通じてかなえたいゴールやオーナーの強みなどから考えましょう。そして、コア・コンセプトを考えていきましょう。その時重要なのは、「お客さんにどのような価値を与えられるお店なのか」という視点です。
具体的なコンセプトの設定方法は、以下の記事を参考にしてください。
顧客設定
顧客設定とは、美容室を利用する人を決めるということです。(必ず必要です)
既存顧客がいる状態であれば、新しく決める必要はないでしょう(ただし、設定したコンセプトにマッチしているというのが前提です)。そうでない場合は、コンセプトから美容室を利用してくれそうなお客さん像を描きます。ブランドパートナー(いわゆるリピーター)となってくれそうな人物像に絞り込むとなおよいでしょう。
必要に応じて、既存のお客さんにヒアリングをすると効果的です。
ブランドパートナーは、普通のお客さんよりも美容室に通う頻度や客単価が高い傾向にあります。さらに、美容室の魅力やサービス内容を熟知しています。そのため、美容室の宣伝やお店について改めて説明する必要がありません。コスト面でも負担が少なく済みます。お店を長く運営する上で必要不可欠な存在です。
詳しい顧客設定方法については、別記事で説明していますので、そちらを参考にしてください。
事業戦略作成
コンセプトと顧客設定を作り込むと、「どのようにしてゴールを達成するか」が見えてきます。この「どのようにして」の部分が、経営戦略です。
例えば、コンセプトが「20~30代の働く女性向けの個室美容室」で、「オープンから半年後の月の売上を150万円にする」というゴールを設定した場合、
- 来店頻度
- 1回あたりの利用金額
- ターゲットが利用してくれそうなサービス(5時以降の利用割引など)
- サブメニューの追加(アイブロウなど)
などを決めると、1日の売上目標に対して何人来店してもらえば達成できるか、どのような集客手段を使うかといった具体的なことが決まっていきます。
ここでのポイントは、お客さんに「また行きたい」と思われる店づくりにつながる経営戦略にすることです。とても大切な作業なので、時間をかけて計画を練りましょう。必要なのはお客さん視点で考えることです。
事業計画作成
これまで決定したことをもとに、事業計画書を作成します。
事業計画書は、後述する作業のガイド的な役割を果たすとともに、融資先に提出する重要な書類です。
盛り込むべき必要な情報は、以下のとおりです。
- 美容室のコンセプト
- 美容室が目指すゴール
- 美容室を開業する動機
- オーナーの経歴
- 提供するサービス
- メニュー構成
- 売上予想
- 開業にあたり必要な経費
- 資金調達方法
など。
事業計画書の書き方について特に決まりはありませんが、誰が見ても「この美容室の事業展開は明確だ」ということが分かるように具体的に書く必要があるでしょう。経営戦略が組み込めれており、経営を続けることで成長していく姿を想像させるほどわかりやすい事業計画を作りましょう。
美容室に適した物件を探す&確定する(開業3~6か月前)
事業計画書を作成したら、その内容をもとに物件の条件を設定します。
物件選びで大切なのは、
- 出店エリア
- 物件の広さ
- 家賃
などです。
コストの面から物件を選ぶ視点も必要ですが、おすすめするのは、
- コンセプトを具現化できるかどうか
- 理想のお客さんがお店の存在に気づいて利用してくれるかどうか
といったことです。
物件選びの基準に「居抜き物件かスケルトン物件か」があります。判断材料としては、それほど優先順位は高くないと考えるのが無難です。
ある程度の設備が整っている居抜き物件に比べて、イチから作る必要のあるスケルトン物件の方が高いというイメージがありますが、居抜き物件でも改修の範囲や工事内容などによってスケルトン物件よりも高くなる場合があります。
物件選びは、頭を悩ませる作業かもしれません。
一人でするのが難しい場合は、この段階で美容室をつくるデザイン設計会社に相談するのも一つの手でしょう。
この段階からサポートを受けることが必ず必要なわけではありませんが、失敗するリスクも事前に検証した上で「工事費用が高くなりやすい物件なのか?」物件を決める前から相談できることはとても安心です。
早くサポートを依頼して損することはありません。
物件が決まったら、物件を所有している不動産会社と契約を結びます。その際支払う必要費用は、
- 敷金
- 礼金
- 前払い家賃
- 仲介手数料
- 物件取得費用
などです。
これら費用は物件により差が出ます。
事前に物件取得費用を不動産会社に聞いて把握しておきましょう。
まとまったお金が必要になることが予想されますので、支払いできるように準備しておくことが賢明です。
融資の申し込みを始める(開業4ヶ月前):自己資金のみの人は4へ
開店する際に必要な資金を準備します。
特に融資を検討している人は、物件が決まったら早めに行動するようにしましょう。すぐにお金が必要になるケースもあります。
借入金は、事業計画書に盛り込んだ初期投資額から自己資金を差し引いた金額が目安です。
融資先として挙げられるのは
- 金融機関(銀行や信用金庫など)
- 日本政策金融金庫
です。
日本政策金融金庫が実施している新創業融資制度は、無担保無保証で利用できるなど融資を受けやすいといわれています。融資先選びに迷っている場合は、利用を検討するとよいでしょう。
必要であれば、資金調達をサポートする専門家に任せることも考えましょう。
費用はかかりますが、自分で進めたことで融資が降りないケースや、希望額が満額通らないケースもあります。資金不足になるぐらいであれば、不得意なことは専門家に任せる判断も必要です。
新創業融資制度の詳細は、こちらで確認してください。
美容室づくりと保健所対応(開業3~4か月前)
資金調達のめどが立ったら、具体的な外装・内装工事に入ります。この段階で必要なものは、あなただけの開業プランが固まっていることです。
店舗づくりで重要な作業は、大きく分けて以下の3つです。
- 設計デザイン
- 費用見積り
- 店舗工事
設計デザイン
美容室の設計デザインで大切なのは、
- コンセプトに寄せたデザインであること
- 保健所が設定している基準を満たしていること
この2点に注視することがおすすめです。
保健所の立入検査について詳しくは、こちらが参考になります。
保健所対策用で準備すべきことが多々あります。保健所は設備のチェックと、消毒関係を確認しますので必要なものは早めに準備しておくことをおすすめします。特に、保健所の検査で厳しい判断をする箇所は、照度と待合の間仕切りです。保健所検査で失敗しない様に、あらかじめよくある失敗理由を把握しておきましょう。
デザイン設計会社は、美容室の店舗デザイン・施工実績のあるところを選ぶのが賢明です。知り合いや顧客に工事関係の人がいるケースもあります。工事を頼みたくなるかもしれませんが、それは避けましょう。知り合いに頼むと遠慮が出てしまいます。
- スケジュール通りに工事が進まない
- 思っていたようなお店にならない
など失敗する可能性が高まるからです。
設計デザインの段階では、外装・内装全体のデザインをはじめセット面の位置やスタッフとお客さんの導線など、さまざまな点で打ち合わせが行われます。画像や写真を取り入れるなど情報を分かりやすく伝え、両者が持つイメージのギャップを小さくすることが求められます。
必要であればイメージコラージュを作って渡す様にしましょう。
費用見積り
設計デザインが決まったら、見積もりを作成してもらいます。設計と工事を別々で行う場合は、各会社に見積もりを依頼します。同じ会社に頼む場合は、両方の費用を合計した金額の見積もりとなります。
見積もりを依頼する際は予算を伝え、できあがった見積もりから、予算内でできることを確認します。見積もりの内容に問題がなければ支払いを済ませましょう。
見積もりについてもわかりづらい項目が多いです。自分一人で判断するよりも、あなたの立場に立ってサポートしてくれる専門家に早めに協力してもらうことがおすすめです。
また、保健所への事前相談や申込のタイミングについて早めに教えてもらうと安心です。事前相談の段階では必要ではありませんが、資料提出の段階では正確な検査日を決めるために工程表が必要です。
店舗工事
支払いを済ませたら、いよいよ店舗の内装工事に入ります。
工事に入る前に必要なものは、近隣挨拶、近隣からのクレームが来た時の業者の連絡先を把握しておくと安心です。
工期は、店舗の広さや物件の状態(居抜き/スケルトン)、内装のこだわり度などによって異なりますが、だいたい3週間前後です。工事中は定期的に現場を訪れて、進捗状況や内装の様子を確認しましょう。
保健所検査の時には工事会社やデザイナーの立ち会いは特に必要ありませんが、不安がある場合は保健所検査の立ち会いを事前にお願いすることをおすすめします。
店舗集客&運営準備(開業1.5~2か月前)
店舗の工事を進める一方で、集客とスタッフを募集して開店準備を進めます。
SNSの開設
TwitterやInstagramなどのアカウントを開設し、美容室の情報を発信します。売り込みではなく、店内のデザインやメニュー、スタッフなどお店の魅力が伝わるような情報を提供するのが無難です。フォローしてくれたアカウントをフォローしたり、コメントに返信したりと、こまめに対応しましょう。
宣伝
お店の宣伝は、オンラインとオフラインの両方で実施します。
オンラインなら、美容室のホームページを立ち上げることが有効でしょう。オフラインなら、新聞の折込広告や電車の吊り革広告、クーポンの配布などが挙げられます。
求人
美容室を開業する上で、スタッフの雇用を考えている場合は、この時期に従業員の募集を始めましょう。
開業の際の求人の方法は、
- 知り合いに声をかける
- 求人サイトに広告を出す
などがあります。
出店する美容室のコンセプトや理想のお客さん、そして自分との相性、技術力など複数の面から考慮して慎重に選ぶことがポイントです。
美容室開業に向けた失敗しない為の鍵となるポイント
開業成功の秘訣は、戦略的なアプローチと柔軟な対応力にあります。ここでは、新規開業者が特に注意すべき三つのポイントを深堀りします。
マーケティングと宣伝戦略と費用
現代の美容業界では、オンラインとオフラインの両方でのマーケティングが不可欠です。特にSNSは、顧客とのコミュニケーションツールとしての役割を持ち、効果的なブランディングや新規顧客の獲得に役立ちます。
一方、ローカルな宣伝方法、例えばチラシや地域のイベント参加なども、地域密着型の美容室にとっては重要です。
また、それらマーケティングに関わる費用を事前に把握して。その費用を事業計画に反映させると安心です。安定した経営のためにも集客にかかる費用は必ず把握しておきましょう。
一人で運営するのか、スタッフの採用と教育について
優れたスタッフは、美容室の成功の鍵となります。しかし、お店にあった雰囲気や言葉使いができることも重要です。また、ただ採用するだけではなく、お店のコンセプトに適切な研修プログラムや労務管理が必要です。
採用基準の明確化、継続的な教育やトレーニング、そして適切な報酬や待遇でのスタッフのモチベーション維持が基本です。しかし、気遣う点は他にもあります。それは、スタッフが休むバックオフィスの広さや、働きたくなるお店のデザインなど、働く美容師のことを考えたお店づくりも重要なポイントです。
余談ですが、いい美容師をお店に集めることがお店の経営に影響する時代であり、経営が安定しているお店には必ずいい美容師が在籍しています。募集の費用をかけてでも、いい美容師を集めることも必要です。
顧客サービスとリピーター獲得
顧客満足度の向上はリピーター獲得の鍵となります。クーポン提供やポイントシステムの導入、また、顧客のニーズや期待に応じた特別なサービス提供など、さまざまな方法での顧客サービスの向上が考えられます。
成功のための具体的な手法やサービス提供のアイディアを開業する前の時間を使ってじっくり考えておきましょう。集客して、リピーターを生み出すお店づくりにはブランディングが必要です。
あなたのお店に最適な一貫したブランド構築を行いましょう。
最後に、税務署の手続きもお忘れなく
美容室開業の流れについて、時系列でご紹介しました。
美容室を開業すると税務署への開業届の申請も必要ですが、個人で開業するのか、法人で開業するのかで変わることもあります。事前に税務署へ連絡して、詳しい内容を確認することもおすすめします。
税務署の人は親切に手続きを教えてくれますので、必要な書類についても色々聞いてみましょう。
ご紹介した流れは、以下のとおりです。
- 事業戦略・事業計画(6~8か月前)
- 物件を探す&確定する(3~6か月前)
- 融資の申し込みを始める(4か月前):自己資金のみの場合は4へ
- 店舗をつくる(3~4か月前)
- 集客 & 運営(1.5~2か月前)
上記の期間はあくまでも目安です。現在の仕事の状況から確保できる時間を予測し、余裕を持って行動するようにしましょう。