飲食店を開業するには?必要な準備と成功のポイントまとめ
「憧れの飲食店をオープンしたい」と思う人はたくさんいますが、思い立ってすぐに開業ができるというわけでは決してありません。
飲食店の開業までには、たくさんの準備や手続き、必要な資格を取得する必要などがあります。また、飲食店開業は当然費用がかかることですから、資金の調達方法についても考えておくことが求められます。この記事では、飲食店を開業するために必要とされている準備や心構え、開業までのスケジュール、集客のコツなどについて詳しく解説していきます。重要なポイントをしっかりと押さえて、飲食店をスムーズに開業させましょう。
目次
1.飲食店開業にあたっての心構えと成功ポイント
飲食店を開業するのであれば、まずは大切な心構えや成功のポイントを押さえておきましょう。
飲食店はオープンしたらそれで終わりではなく、オープンしてようやくスタート地点にたったといえます。
安定した経営を維持していくためにも、成功のポイントを心得ておきましょう。
1-1.今のまま開業しても良いのかを考える
飲食店の開業を思い立ったとき、「本当に開業して良いのか」ということを考えておく必要があります。
街に出れば数多くの飲食店があり、どのお店も賑わっているといったイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、飲食店を開業しても誰もが成功するとは限りません。
例えば、「料理が好き」という理由だけで開業をしても、上手くいかない場合もたくさんあります。
「好き」という気持ちだけでなく、「どうしたら事業として飲食店を成功させることができるのか?」という視点で考えがまとまっているのか一度考えてみましょう。
単純に「おいしい料理を提供していればうまくいく」ということではありません。
美味しい料理を提供するお店は沢山あります。その中であなたのお店にどうやってお客さんを集めるのか具体的に考える事が重要です。
飲食店を開業するにあたっては入念な計画を練り、かつスムーズな開業を目指していくことが、失敗しないための前提条件といえます。
1-2.経営者になることを意識する
飲食店を開業するとき、出店者が経営者になることが多いです。その場合は、「経営者になる」という意識を持つことがとても大切です。
飲食店を経営していくということは、人を雇ったり、お客様に料理を提供したりするなどといったことを毎日続けていくということです。
例えば、人を雇っているにもかかわらず、給料の未払いなどがあってはなりません。
また、お客様に提供する料理に関しても、高い意識を持って作る必要があります。何か問題が起こったとき、飲食店の経営者はそれ相応の責任を背負うことになるため、開業にあたっては経営者としての自覚を持つことが重要です。
Point
高い意識を持っている料理人としてだけではなく、経営者として何をするべきか理解する事が重要。
1-3.競合店舗の調査をしておく
「どうすれば売上が得られるのか?」ということは、経営者なら誰もが考える事柄の一つです。
確実に売上を得ていくためには、ライバル店の調査が欠かせません。ライバル店をチェックするときには、いくつかの項目が挙げられます。
- ターゲット層:どんなお客さんを狙っているのか?
- メニューの価格帯:平均単価だけでなく売上の中心となるメニューの価格は?
- 提供方法:セルフ?フルサービス?
- 立地条件:駅近?住宅街?
- 集客対策:広告やSNSの活用実態は?
- リピート対策:また行きたいと思ってもらえる対策は?
まず、誰もが簡単にできる競合調査は店内の雰囲気(内外装のデザイン)に関して把握することです。
しかし、リサーチ対象の飲食店が、どんなターゲット層にどんな目的をもって料理を提供しているのかまで具体的に調査したうえで、店内の雰囲気を把握して参考にしましょう。
ライバル店をチェックしておくと内装デザインを決定するときに役立てられます。しかし、ライバル店となる店舗と、あなたのお店とでは、ターゲット層も違えばお客さんが感じる価値も違います。
内外装のデザインだけで差別化できるわけではありませんので注意しましょう。
次に、接客態度も重要な要素です。
従業員が気持ちの良い接客ができているかどうかは、客としてライバル店を実際に利用して確かめることができます。「接客のどこが優れているか」「改善すべき点があるか」などを見極めておきましょう。
さらに、ライバル店のメニューの種類や金額、料理の味、料理の提供時間などについてもチェックしておくことをおすすめします。これらについても、ライバル店を客の立場で利用して独自に判断していきましょう。
ライバル店が繁盛店である場合には、「魅力的なメニューはどれか」「メニューの価格帯はどの程度か」などといったことについても、必ず調査の対象としておくことが重要です。
Point
・内外装のデザインだけで差別化できるわけではない。
・あなたの方がより良いサービスを提供できることをリスト化する。
・メニューの種類や金額、料理の味、料理の提供時間などをお客目線で点数化する。
1-4.物件を慎重に選ぶ
家賃は毎月かかる固定費です。そのため、予算と照らし合わせて面積や立地を慎重に決めましょう。
物件を決めるとき、立地条件は多くの経営者が気にするところです。
立地条件は、一般的に集客に大きく関わってくる問題です。そのため、「立地が良ければ家賃は高くなるのが一般的」と知っておきましょう。
飲食店の開業に関しては、予算の問題などから居抜き物件を活用する人もたくさんいます。確かに、居抜き物件では物件に残された設備や調理機器などを自由に使って良いため、大幅なコストダウンが実現できる場合があります。
しかし、お店の状態次第で厨房の配置やレイアウトを変える可能性があることから、居抜き物件での飲食店開業は必ずしも安く出店できるわけではありません。特に、前テナントと違う業種で飲食店を出店する際は、注意しましょう。
1-5.設計デザイン会社・施工会社を慎重に選ぶ
一般的に、内外装のデザインの良し悪しは飲食店の売上に直接影響すると思われています。
しかし、本当に重要なポイントは、オープンした後に狙ったターゲット層のお客さんに来店してもらい、継続的にお店に通ってもらえるお店を作ることです。あくまでも、内外装のデザインはお店の価値を形成する一つのパーツです。
その為、デザインというパーツ単体で考えるのではなく、あなたの事業戦略を俯瞰(ふかん)して他のパーツとの一貫性あるお店を作る事が重要です。
また、施工会社は内外装の工事を行う会社です。工事会社に依頼する前に必ずお店の経営戦略のコアとなる内容を決めてから施工会社に工事の依頼や見積もりの依頼をしましょう。
ここまでの流れをしっかりできていれば、納得のいく内外装工事をしてもらえるかどうかは、施工会社の腕次第といえるでしょう。
そのため、飲食店の内外装の施工実績がある会社を選ぶことと、設計者やデザイナーに設計監理をしてもらう事がポイントです。
内外装工事で疑問や問題などが生じたときなどには、気軽に相談に乗ってもらえるような関係構築ができていることが理想です。
2.開業のおおまかなスケジュール
一般的な開業までの流れを知っておくと準備の進め方などで悩まなくて済みます。まずは飲食店のコンセプトを設定し、事業計画を立てます。
次に、物件探しや資金調達を行います。
そして、物件が決まったら店舗内外設計と施工に入ります。この頃にメニュー開発と構成も進めていき、備品の購入もしておきましょう。さらに、漏れのないように諸官庁への届出および手続きを行っておきます。
その後、求人、スタッフの教育、販促活動、各種マニュアルの整備、開業へと進めていきます。
飲食店開業までのおおまかなスケジュールを把握しておき、スムーズに準備を進めましょう。
2-1.事業計画を立てる
飲食店の出店準備を進める前に、まずはお店のコンセプトを決めておきましょう。最初にじっくり時間をかけてコンセプトを決めておかなければ、後々大きな失敗やトラブルを招いてしまうおそれがあります。
コンセプトは、飲食店の内外装デザインやメニューなどにも直接影響するものです。
そのため、コンセプトが明確でなければ、お客様がお店を利用しないといった事態も想定され、結果的に売上につながらないということさえ起こります。まずは、コンセプトを決定することから始めていきましょう。そして、具体的なコンセプトが決まった後は、より明確な計画を立てるために事業計画書を作成すべきといえるでしょう。
明確なコンセプトの決め方は『店舗のコンセプトを決める正しい方法と知識』を読み込みましょう。
2-2.物件探しと資金調達
物件探しには、ある程度時間を要する可能性があります。一度物件を決めてしまったらその後に変更することはできないため、経営者としてコンセプトの実現を目指すことができる納得のいく物件を探していきましょう。
ただ、物件を探しや物件選びは経験や知識が必要です。その為、あなた一人で進めることに不安を感じる様でしたら、物件探しから手伝ってくれる会社に相談してサポートしてもらいましょう。
また、物件の取得(契約)にはお金が必要です。物件の取得に合わせて、開業に必要な資金を調達しておくべきです。飲食店の開業を決めたら、資金の調達方法についても現実問題として考えておきましょう。
2-3.設計と工事
物件が決まったら設計会社や施工業者を選定していきます。施工業者を選ぶときは、会社によってデザインと施工が分かれている業者もあると知っておきましょう。
実際に業者へ依頼をする前に、デザインと施工を両方同じ業者に依頼するか、それぞれ別々に依頼するかという点をしっかりと考えておく必要があります。
デザイン設計と工事を進めるにあたっては、業者と連携を取りながら行う必要があります。デザインに関しては、専門的な知識と経験のあるデザイナーや建築士などへの依頼がおすすめです。
なぜなら、最近のお客さんのニーズは昔よりも複雑になっています。ただお店を出店しただけでは、お客さんを集客するのが難しくなっているからです。また、飲食店は店舗数が多く、似た様な商品やサービスを行う競合が沢山います。その様な環境でも、あなたのお店を永く経営できるお店として出店するには、お店をオープンする前の戦略を練ることがとても重要です。
オープンの希望日が決まっているのであれば、そこから逆算をして設計と工事を計画的に進めていくことが大切です。
Point
永く経営できるお店をつくるにはどうすればいいのか?という経営戦略を考え、あなたの計画を一緒に実現してくれる会社を選ぶ様にしましょう。業者選びでお店の完成度が大きく変わります。
2-4.施工業者の選定
施工に関しては、最終的な金額にばかり着目してしまいがちです。
しかし、レイアウトや導線計画が従業員の仕事の効率などに影響したり、内外装のデザインが集客の増減にかかわってきたりする可能性は十分にあります。その設計内容を図面から読み取り、具体的に形にする能力や経験値が施工会社に備わっているのか確認して判断することも重要です。
施工業者を選定するときは、さまざまな可能性を視野に入れながら決定するようにしましょう。
特に、設備関係の工事経験が豊富で、設計会社など第三者と連携をうまく行える会社が理想です。この様な会社は、自社以外の人からチェックや指摘を受けて是正するまでの流れを確立しています。
Point
最終的な工事金額にだけ着目しない。施工業者を選定するときは、さまざまな可能性を視野に入れながら決定するようにしましょう。
2-5.メニューの開発や構成
必要に応じて、メニュー開発や構成も考えていきましょう。具体的には、飲食店の顔となるような看板メニューやデザート、それぞれの価格などのバランスを検討してきます。もちろん、メニューを決定する前には試作や試食をしてみることが重要です。
味だけではなく、全体的な構成も熟考することがポイントです。むやみにメニューを増やしたからといって売上アップにつながるとは限らないと、心得ておく必要があるといえるでしょう。
2-6.備品の購入
必要な備品を購入するときには、予算を考慮しながら計画的に行うことが大切です。テーブル・椅子・食器・調理器具などといった備品を用意していきましょう。
特に、インテリアや食器などには店のコンセプトが反映されていると理想的です。家具や照明などは店舗のアクセントになり得るインテリアですから、予算を考えながら理想とする店舗のイメージに合ったものを選ぶと良いでしょう。
注意したいのは、内装工事の見積もりに入っていないケースです。家具や照明など、どれが内装工事に含まれていて、どれが含まれていないのか必ず自分自身で確認しておきましょう。
2-7.諸官庁への届出や手続き
飲食店の開店前の段階で、諸官庁への届出が必要です。必要な届出がなければ、飲食店としての経営はしてはなりません。保健所への申請と許可、税務署への届出などが必要とされているため、見落としのないように届出や手続きをしておきましょう。
特に、保健所へは申請だけではなく、許可が下りるまでにある程度時間がかかります。時間に余裕を持って、必要な届出や手続きを済ませましょう。
飲食店の場合、これら行政への申請とは別で消防署の検査を受けます。必要な防災設備が施工されているか確認を行います。専門的な内容が多く、できるだけ専門家に任せて必要な書類関係の準備や提出のみ自身で行う様にしましょう。
2-8.求人とスタッフ教育
人を雇って開業を目指す場合、求人広告を出すなどして必要な人材を確保することが求められます。採用後はスタッフの教育研修を実施するなどして、オープンの日に備えることが大切です。スタッフの教育研修には、オープン前の店舗を実際に利用して、シミュレーションしてみることがおすすめです。
スタッフの接客に関しては、店舗が繁盛店へ成長するかどうかということに大きく影響します。心のこもったサービスや気持ちの良い積極ができるよう、スタッフ教育も徹底しておくことが重要です。
2-9.販促活動・集客活動
新しく飲食店がオープンしたことを知らせるためには、販促活動が欠かせません。
例えば、公式ホームページの設立や広告・ポスティング会社への依頼、web広告の申し込みなどが販促活動の方法として挙げられます。SNSを利用した販促活動も効果的、かつ費用を低コストに抑えることができます。
販促活動も方法によっては膨大なコストがかかる場合がありますから、多くの人に飲食店の宣伝をすることが目的なら、SNSの利用も検討してみることをおすすめします。
しかし、理想とするお客さんに正しく価値を感じてもらう必要があります。その為には価値を伝える為の基礎づくりができている事が大前提です。基礎ができていない状態で販促活動・集客活動をしても、穴の空いたバケツに水を入れているのと同じ状態になります。
お店の基礎づくりについては『ブランド』という考え方が参考になります。
2-10.各種マニュアルの整備
接客マナー、調理方法、勤務ルールなど、必要に応じてマニュアルを用意することをおすすめします。ある程度マニュアルがあったほうが従業員も働きやすく、オープン後も混乱が生じる可能性が低いといえます。
マナーやルールなどを徹底するためにも、マニュアルの整備は必要といえるでしょう。
3.飲食店の開業に必要な資格
飲食店を開業するためには、いくつかの資格が必要となります。そのため、無資格である人が飲食店の開業を思い立ったとしても、すぐにはオープンすることができません。資格の取得も計画的に行い、スムーズなオープンを目指しましょう。
3-1.食品衛生責任者の資格
飲食店を経営するためには、「食品衛生責任者」の資格が必要です。食品衛生責任者は、食品の調理や販売などを行うのに必要な資格で、衛生管理が行われた安全な食品を提供するためには欠かせないものとされています。
そのため、飲食店を営業するためには、食品衛生責任者の資格取得は必須といえます。
食品衛生責任者は、食品衛生上の管理運営が職務であり、店舗ごとに責任者を1人置かなくてはなりません。
1人で複数の店舗の食品衛生責任者を兼任することはできないため、この点は注意する必要があります。そして、食品衛生責任者は、定められた講習を受けることで取得ができます。栄養士や調理師、製菓衛生士などの資格をすでに取得している人は、新たに食品衛生責任者の資格取得は必要ありません。
飲食店を開業する前には、保健所で飲食店営業許可を取得して、手続きに不備がないよう気をつけましょう。
3-2.防火管理者の資格
収容人員が30人以上の店舗である場合は、防火管理者の選任が必要となります。
詳しくは、延床面積が300平米以上なら甲種防火管理者、300平米未満なら乙種防火管理者の選任が条件です。
「客席の数が30人未満の設定だから、防火管理者の届出は必要ない」と思っているのなら、それは間違いです。従業員の人数も収容人員に入りますから、客席数が30席未満であっても届出が必要な場合があります。
防火管理者のことで迷ったら、消防署へ問い合わせをして確認しておきましょう。
3-3.調理師免許は必須ではない
飲食店を開業するとなると、「調理師免許が必要なのでは?」と考える人も少なくありません。しかし、実際には調理師免許がなくても飲食店を開業することはできます。
ただ、調理師免許は調理人としての技術や知識を証明するための資格です。そのため、飲食店を開業するのであれば持っておいたほうが良いといえるでしょう。また、調理師免許を取得していると、食品衛生責任者になる際に必要とされている講習の受講を省けるといったメリットもあります。
技術や知識を身につけるという意味においても、調理師免許の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
4.準備に不可欠な飲食店開業の手続き
飲食店の開業には多くの手続きが必要となります。準備を進めていく段階で、開業に不可欠とされる手続きに関して漏れがないように行っていきましょう。ある程度時間を要する手続きも含まれますから、スケジュールに余裕を持って手続きを行うことがポイントです。
4-1.保健所での手続き
飲食店の開業には、保健所での手続きが必要不可欠です。「食品営業許可申請」と呼ばれる手続きをしておかなければ、飲食店としての営業ができません。飲食店の食品営業許可申請を取得するための必要書類は、自治体によって異なります。
食品営業許可申請には、営業設備の大要や平面図、見取図、水質検査成績表、食品衛生責任者の資格を有することを証するもの(「食品衛生責任者手帳」などが必要)などの書類の提出が求められます。
すぐに用意できない書類も多くあるため、余裕を持って準備を進めていきましょう。
保健所での手続きは、店舗が完成する10日前までには届出を終わらせておきましょう。
保健所に食品営業許可申請をした後に、保健所の担当者が店舗の設備などが要件に見合っているかどうかを検査しに来ます。
検査の日程については保健所の担当者と申請者で調整します。しかし、すぐに検査に来てもらえない可能性もあります。飲食店のオープン予定日が決まっているときは、余裕を持って申請しましょう。
。また、飲食店の検査で何も問題がなく検査に合格したときには、営業許可証が交付されます。営業許可証が早めに欲しいときには、保健所に問い合わせしてみてください。すでに営業許可証ができあがっている場合もあるため、必要に応じて保健所に問い合わせてみると良いでしょう。
このように、保健所の手続きにはある程度の時間がかかるため、スケジュールに余裕を持っておくことがポイントといえます。
4-2.消防署での手続き
消防署で必要な手続きについても押さえておきましょう。
まず、「防火管理者選任届」です。
これを提出するには、そもそも防火管理者がいなければ手続きができません。
そして、防火管理者になるには、防火防災管理講習を受ける必要があります。
この講習にはいくつかの種類がありますが、店舗を経営するときに受講する講習に関しては、「防火・防災管理新規講習」が一般的です。
講習を受けたいときには、最寄りの消防署に問い合わせをすると良いでしょう。選任届は、収容人数が30人を超える店舗では必要とされているため、営業開始までには忘れないように提出してください。
次に、消防署には「防火対象設備使用開始届」の提出も必要です。
防火対象設備使用開始届は、建物や建物の一部を新たに使用し始める場合や、間仕切りや内装等を変更する場合などに提出が求められます。
必要書類は、「防火対象設備使用開始届」に合わせて、「営業所の平面図」「素材表」「フロアの平面図」などが挙げられます。届出に必要な書類や書き方は消防署によって異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
また、「火を使用する設備等の設置届」は、焼肉店などの火を使用する設備を設置する場合に必要な手続きです。設備設置前までには消防署へ届出をしておくようにしましょう。
4-3.警察署での手続き
飲食店を開業するときには、警察署への手続きが必要な場合があります。
まず、「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」です。飲食店で深夜0時以降もお酒を提供するのであれば、「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」が必要となります。さらに、店舗で接待行為をする場合には、「風俗営業許可申請」が不可欠です。
わからないことがあれば、所轄の警察署へ相談してみると良いでしょう。
4-4.その他の手続き
その他の手続に関しても、必要に応じてスムーズに進めていきましょう。
まず、労働基準監督署では労災保険の加入手続きができます。この手続きは、飲食店で従業員を雇う場合に必要となります。雇用日の翌日から10日以内が届出時期となっていますから、忘れないように手続きをしておきましょう。
次に、公安職業安定所では、雇用保険の加入手続きが可能です。こちらの手続きも従業員を雇う場合には必要とされており、届出時期は雇用日の翌日から10日以内となっています。さらに、社会保険事務所での社会保険の加入手続きも必ずしておきましょう。
社会保険の加入手続きは、法人の場合は強制加入です。また、個人の場合であれば、従業員が5人以上で社会保険の加入が可能です。ただし、従業員が5人未満のときであっても、従業員の2分の1以上が希望した場合は加入しなければならないと知っておくのも大切です。
社会保険の加入手続きでわからないことがあれば社会保険事務所へ相談をして、速やかに手続きが行えるようにしましょう。
5.飲食店開業にかかる費用の内訳と相場
店舗の形態によっても大きく異なりますが、飲食店開業にかかる費用の内訳と相場を知っておきましょう。
例えば、年商2,000万円の見込みで営業をする場合には、開業には約1,000万円が必要であるといわれています。
大きな費用が必要となるため、節約方法についてもしっかりと考えておき、賢く開業準備をすることがポイントです。
5-1.物件取得費用
飲食店の開業には、物件の取得が欠かせません。物件を取得するにあたっては、開業に必要とされる予算の多くを費やしているという飲食店経営者がほとんどです。
例えば、年商を2,000万円と見込んでいるのであれば、物件取得にかかる費用は約450万円程度を考えておきましょう。物件取得費用を節約するためには、いくつかの方法が挙げられます。
まず、できるだけ格安の物件を探すことがポイントです。
立地が良い所にある物件に関しては、取得費用も高額となる可能性が高いといえます。確かに、好立地の物件で飲食店を開業すると、より多くのお客様の利用が見込めるため集客アップや売上アップが実現できる可能性があります。
しかし、いくら立地が良くても飲食店の雰囲気が良くなかったり、接客やサービスが悪かったりした場合などには、想定していた売上が実現できないといったことも起こり得るといえます。
飲食店が成功するか否かについては、立地ですべてが決まるわけではありません。予算に照らし合わせながら経営者が納得できる条件で、なおかつできるだけ格安の物件を探していくことがおすすめです。
また、居抜き物件を取得すると、物件取得費用の節約ができます。
居抜き物件には、残された設備や厨房機器などを利用して良いといったメリットがあることから、結果的に節約につながるといえます。また、居抜き物件であることから、内外装の工事費が節約できる可能性もあります。
居抜き物件ではレイアウトを大きく変更することができない場合も考えられるため、これがコスト削減につながるといえます。
内外装の工事費に関しては、施工業者やデザイナーなどにしっかりと相談をし
戦略的に節約をしていくと良いでしょう。
5-2.内外装の工事費用
内外装の工事にかかる費用は、年商2,000万円見込みの場合、約800万円が相場です。
内外装工事の節約方法に関しては、まずは安く施工してくれる業者を探すことをおすすめします。
安く施工してくれ、なおかつ飲食店の内外装工事の経験が豊富な業者に依頼すると、大きなトラブルがなく必要とされている工事を完了することができるでしょう。
内外装工事費の節約を考えるのであれば、施工業者やデザイナーとしっかり打ち合わせをして、コストダウンを図ることがポイントです。打ち合わせでは、自分の要望や店舗のコンセプトを正確に伝えて、節約はしつつも雰囲気の良い空間が作れるようにしましょう。
次に、無駄な装飾を省くことでも節約は可能です。
例えば、床材や壁紙などに費用がかかっているのであれば、類似した素材を選ぶなどといった工夫をするとコストダウンにつながります。
無駄な装飾を省くことはコストダウンをするうえで重要ですが、工事費用を気にするあまり店舗の雰囲気が予定していたものとまったく異なるような仕上がりになることだけは避けるべきといえるでしょう。
5-3.厨房設備の工事
厨房設備の工事でも、やり方によっては節約が可能です。年商2,000万円見込みの場合、厨房設備工事の相場は約100万円です。厨房設備を新品未使用品で揃えたら、予算をオーバーしてしまう可能性があります。厨房設備は中古品でも支障のない場合がよくありますから、節約のために中古品の購入も検討してみると良いでしょう。
5-4.備品の用意(テーブル・椅子・食器等)
年商2,000万円が見込みの場合、テーブルや椅子、食器などの備品の用意に充てることができる費用の相場は約80万円です。
コンセプトによっては、80万円で飲食店の開業に必要な備品をすべて用意するのはとても難しいといえるでしょう。
特に、インテリアや食器などにはこだわりたいという経営者はたくさんいますから、予算を考慮しながらコンセプトに合った備品の購入を見極めていくことが大切です。
予算には限りがありますから、節約したいと考えるなら備品にはこだわり過ぎず、価格重視で選ぶのも選択肢の一つと知っておきましょう。
5-5.運転資金
飲食店をオープンして間もない頃は、店舗の認知度が低いといった問題があります。その場合、集客に関しても見込みを下回る可能性があります。しかしながら、オープンした後はそれでも経営を続けていかなければなりませんから、ある程度の運転資金を用意しておくと安心です。年商2,000万円見込みの場合、運転資金は約150万円が相場です。運転資金についても、賢く節約していきましょう。
まず、スタッフの人数は適切な数にすることがポイントです。スタッフの数が多いと、それだけ人件費がかかります。スタッフの適正人数については、雇う前にしっかりと検討しておきましょう。
次に、食材を安く仕入れることができる仕入れ先を見つけることもポイントです。食材の仕入れが経営を圧迫する可能性も考えられますから、新鮮で安い食材を手に入れることができる仕入れ先と契約をしておきましょう。
6.飲食店開業に必要な資金調達方法
飲食店を開業するためには、当然資金が必要です。
資金の調達方法についてもしっかりと考えておきましょう。
複数ある資金調達の方法を心得ておき、どの資金調達方法が最適であるかという点を経営者としてしっかりと見極めることが大切です。
6-1.自分で貯める
開業に必要な資金を「自分で貯める」という方法は、誰にも迷惑をかけない方法といえるでしょう。
しかし、形態や規模にもよります。飲食店の開業にあたっては相当な資金が必要となります。貯金のペースによっては、開業までの年月がかなりかかってしまう可能性があると知っておきましょう。
6-2.家族や友人に借りる
開業に必要な資金が不足している場合、家族や友人に借りるという方法もあります。家族や友人は自分に近しい存在であるため、お金を借りたまま返さないでいると、信用問題に関わります。
そもそも、家族や友人からは簡単にお金を貸してはもらえません。
信用を失う可能性があることからも、他の資金調達の方法を検討してみる必要があるといえるでしょう。
6-3.銀行で融資をしてもらう
金融機関で融資をしてもらう方法も、資金調達方法の一つといえます。銀行から融資を受けるということで、家族や友人をあたるよりは、確実に開業資金を得ることができる点がメリットとも考えられます。
しかし、銀行から融資してもらう場合には、当然金利がかかってしまいます。メリットとデメリットをしっかりと見極めたうえで、銀行から融資してもらうかどうかを決定しましょう。
6-4.助成金や補助金を活用する
国や地域から援助してもらえる助成金や補助金制度を利用して、開業に必要な資金を調達する方法もあります。
返済不要の融資を受けられる点は魅力の一つですが、「審査期間が長い」「審査基準が厳しい」などといった問題があります。
飲食店開業に利用できる助成金・補助金は「キャリアアップ助成金」や「小規模事業者持続化補助金」、「創業補助金」「傷害現役起業支援助成金」「軽減税率対策補助金」などがあります。
基準となる要件を満たしているかどうかなどを確認したうえで、助成金や補助金制度の利用を検討してみることをおすすめします。
7.開業後に実施すべき集客のコツ
開業した後に飲食店経営を成功させるためには、集客が鍵となります。より多くのお客様に店舗を利用してもらえるような工夫を常に模索していく姿勢が大切です。開業後に効果的な集客のコツを押さえておき、どんどん取り入れていきましょう。
7-1.居心地の良い店づくり
お客様が「居心地が良い」と感じる飲食店を実現するためには、「内装を工夫する」「スタッフの接客レベルを上げる」などといった事柄の積み重ねが重要です。
より多くのお客様に飲食店を利用することによる居心地の良さを感じてもらえることができれば、リピーターを獲得しやすくなるといったメリットにもつながります。
7-2.販促活動の継続
販促活動に関しては、オープン前だけではなく開業した後にも続けていくことがポイントです。
チラシやホームページ、SNSといった方法で販促活動を継続していきましょう。店舗の情報を発信し続けることによって、新規顧客を獲得する機会が増えていきます。まずは、より多くの人に店舗の存在を知ってもらうことから始めましょう。
7-3.キャンペーンの実施
抽選プレゼントの実施、デザートのサービス、クーポン券の配布などといった方法でキャンペーンを実施すると、集客しやすくなります。
「どのようなキャンペーンだったら店舗を利用してみたいか」ということを考えながら、キャンペーンの内容について検討していきましょう。
7-4.コラボの実施
協業することで、他の客層に効果的なアプローチを行うことができます。コラボの例としては、さまざまなものが考えられます。
例えば、他店と協業して「お互いのお店のレシートを提示すると特典が受けられる」というコラボも、集客につながる可能性があります。
また、「アニメキャラクターとのコラボ」や「アーティストを呼んでイベントを開催する」、「オフ会の会場にしてもらう」などといったアイデアも、もともと設定していたターゲット層以外の客層に訴えることができるという点で効果的といえます。
8.飲食店の開業を成功させよう!
飲食店の開業を成功に導くためには、経営者としての心構えや失敗しないための対処法についてしっかりと押さえておく必要があります。
また、飲食店を繁盛店へと成長させるために必要とされるアイデアや戦略を、経営者は常に持っておくことが大切です。開業までの準備をスムーズに行い、理想の飲食店をオープンさせましょう。